はじめに
500円は、「回路に関する」部品代の合計です。後で部品リストを出しますが、ACアダプタやスイッチ類、基板代を省いた金額が500円です。
とは言え、トータルでも1500円ほどです。また部品点数も少なく、簡単に作ることができます。
そして何より、価格の割に高性能です。特に低速域での動作が非常に良好で、またボリュームをわずかに回すと疑似常点灯みたいな事もできます。(コアレスモーターでは微妙ですが)
さらに、PFM制御のパワーパックはPWM制御のパワーパックより消費電力も少なく省エネです。
しかし、PFMとは何ぞや?という方もけっこう居ると思いますので、まずはPFM制御について軽く説明します。
(回路図と部品のみ見たい方は、見出し「回路図」まで飛ばしてください)
PFM制御とは?
PWM制御(Pulse Width Modulation:パルス幅変調)は、簡単に言うと「一定周期でスイッチのON・OFFを繰り返し、ON時間(またはOFF時間)を変化させることで実効電圧を変えましょう」という制御方法です。
また、PWM制御ではデューティ比という言葉をよく聞きますが、これは周期に対するON時間の比です。入力電圧にデューティ比を掛けることで平均電圧(=実効電圧)を求めることができます。
例えば、入力12Vでデューティ比10%であれば、実効電圧は12×0.1=1.2V となります。
PFM制御(Pulse Frequency Modulation:パルス周波数変調)は、簡単に言うと「ON時間(またはOFF時間)を一定にして、周期を変化させることで実効電圧を変えましょう」という制御方法です。
周期は英語でperiodなのでPPM制御では?と思わなくもないですが、PPMはパルス位置変調(Pulse Position Modulation)の略として使われること、周波数を変えれば周期も当然変わることから、PFMと呼ばれているのだと思います(この辺は筆者の勝手な推測です)。
PWMとPFMについて、より詳しく知りたい方はこちらを参照してください。(rohm社様の解説ページです)
次に、パワーパックにおけるPWMとPFMの比較をしてみます。
パワーパックにおけるPWM制御とPFM制御の比較
ここでは、パワーパックにおいてのPWM制御とPFM制御それぞれのメリット・デメリットを説明します。
以下の表にまとめました。
「安価で作る」ことに特化して考える場合、PFM制御を採用した方がコスパが良いと思います。
PWM制御もPFM制御も、安く作る場合は大抵555タイマーICを使います(今回の回路も555タイマーICを使用しています)。
秋月の、500円で売っているPWMモーター速度可変キット(これ)も矩形波の生成に555タイマーICを使用しています。
しかし、555タイマーICのみでPWM制御をする場合、デューティ比を0%にできないという問題があります。つまり、出力を0にできません。
一方でPFM制御の場合、555タイマーICのみで0%(0V)までの可変が可能です。
よって、安く作る場合(555タイマーICを制御に使用する場合)に限ってはPFM制御がPWMの上位互換といえる性能を持ちます。
また、鉄道模型の場合、MAXスピードで走らせ続けることは普通やらない(はず)なので、低速域での損失が少ないPFM制御の方がトータルでは電力損失が少ないと考えられます。
乾電池等を電源とする場合は特にPFM制御を採用すべきです。
スイッチング周波数とトルクの関係について
別記事にまとめました。
ここまでで安価なパワーパックにおけるPFM制御の利点を確認できましたので、次はPFM制御パワーパックの回路図を紹介致します。
回路図
回路図はこちらです。(画像をクリックすると拡大します)
先述したように、555タイマーIC(njm555D)を使用した簡単な回路です。これだけでPFM制御が可能になります。
低速がよく効きますが、低速時の周波数が可聴域にまで落ちますのでVVVFみたいな音がモーターから鳴ります。
積層セラコンからも鳴るからか、ライト付きのKATOの先頭車からも同様の音が微かに鳴りました。
音さえ気にしなければ、走行性能は(コアレスモーターを除いて)そこそこ優秀です。
なお、入力は12V1AのACアダプターを想定しています。
回路図内の部品の合計価格よりACアダプターの方が高いです……。
(追記)
回路図には書いていませんが、電源SWを入れる場合はD1の前(+12VとD1の間)とかに入れると良いです。
一般的には安全のためにGND側ではなく、高電位側にSWを付けます。
また、電源LEDを付けたい場合はC1と並列に入れれば良いかと思います。
LED保護のため、1kΩくらいの抵抗をLEDと直列につないでおきましょう。
部品一覧
全て秋月電子様で購入できます。
基板とケースとDCジャックはまあ、適当に好みのものを選んでくださいませ。
完成画像
発注したプリント基板が届き次第……
素晴らしい!
是非この様な為になる記事を
今後もお願いいたします。